社会的オープンエンドな問題と
批判的思考

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はじめに

未曽有のコロナ危機の中,日本の数学教育も転換点を迎えている.感染者数の予測は科学的解が算出可能だが,緊急事態宣言の発動等の問題は数学的解だけでは解決し得ない社会的課題である.このように「科学に問うことはできるが,科学だけでは答えることのできない問題」(Weinberg, 1972)を,トランス・サイエンスな問題と呼ぶ.そこでは互いの利害を調整し,社会的・数理的に意思決定する力の育成が求められている。つまり唯一解を求める社会から最適解を求める社会へ移行し,Skovsmose(1994)の「批判的数学教育」は,数学を通して公正な社会的場面の深い理解と批判的市民の育成を目指している.一方で,首尾一貫したカリキュラムの欠如(Brantlinger, 2013)が課題とされている.本研究では,批判的数学教育の理念を日本の授業文化に調和させた日本型批判的数学教育のモデルカリキュラムの構築によって,日本の数学教育のパラダイムシフトを構想する意味で,挑戦的である. このホームページでは、これまでの研究成果の集約を行うとともに、今後、自分たち研究チームのプラットフォームであり、より広い範囲での研究を呼び起こしていく場とする目的で掲示した。